子会社とは

企業が企業の株主になる

上場している企業の株式は、証券取引所を通して誰でも購入することができます。同様に、企業もまた別の企業の株主になることができます。株式を保有していると、株主総会に参加して議決に参加することもできます。そして、株主総会の議決は持っている株式の数による多数決で決まりますから、大量の株式を保有する株主は株主総会で大きな影響力を及ぼすことができます。特に株式の50%超の株式(半分より1株でも多く)保有している企業は、ほとんどの事柄について、他の株主が全員反対していたとしても意見を通すことができます。役員の選出についても同じで、株式の過半数を持つ企業は自社の社員を役員として送り込むこともできます。つまり、その企業を支配できるようになるということです。このことから、ある企業がある企業の株式の50%超を保有している場合、保有している企業を親会社、保有されている企業は子会社といいます。

さらに、50%超ではなく100%全て株式を保有するような関係も考えられます。このような子会社は100%子会社、完全子会社といわれる場合もあります。

また、あるA社の子会社がB社で、そのB社の子会社にC社があるようなケースもあります。この場合には、C社もA社の子会社になりますが、特に孫会社ということもあります。

また、ある企業が別の企業の50%とまではいきませんが、20%以上の株式を保有していれば、完全に支配するまでは至らないとしても重要な影響を及ぼすことができます。このことから株式の20%以上を保有されている企業を関連会社、保有している企業をその他の関係会社といいます。

もう一つ、子会社のうち、親会社に対し売上高の総額又は仕入高の総額が10%以上、つまり関係が極めて強く、純資産額が30%以上、もしくは資本金の額又は出資の額が10%以上と比較的規模の大きな企業を特定子会社といいます。

トヨタグループ

実際のところを見てみましょう。トヨタ自動車株式会社(以下トヨタとします)は世界有数の自動車会社であることはいうまでもありませんが、実際には同社が一貫して自動車を製造販売しているわけではなく、関係会社と分業をしながら事業を展開しています。そのトヨタグループにはどのような関係会社があるか深掘りしてみました。

トヨタ御三家

トヨタ自動車株式会社の関連会社の中でも中核をなす3社はトヨタ御三家といわれています。

株式会社トヨタ自動織機

トヨタの源流は1926年(大正15年)に自動織機を製造・販売するために設立されたが豊田自動織機製作所です。創立者は自動織機を発明した豊田佐吉で、その長男である豊田喜一郎が自動車の製造を始めました。同社は株式会社トヨタ自動織機として、現在も繊維機械も製造していますが、自動車で一番大切な部品であるエンジンが主力製品となっています。資本関係でいうと、トヨタが同社の株式の24.67%を保有しているので、関係会社の位置づけになります。面白いことに、トヨタ自動織機もトヨタの株式の7.86%を保有しています。このように、お互いに株式を持ち合っているので「持ち合い」といわれています。

株式会社デンソー

カーナビやドライブレコーダーなど自動車好きの人にとってなじみのある企業で、電子関係の部品に強みを持っています。今の自動車は電子機器といっても良いほど電子制御化されており、デンソーの技術は自動車全体でなくてはならないものになっています。トヨタは同社の株式の24.23%を保有していて、デンソーはトヨタの株式の3.04%を保有するなど持ち合いの関係にあります。

また、自動車に関心のない人でも、携帯でアドレスを読み込むときにお世話になっているQRコードは、もともとは同社が膨大な部品を管理するために開発したものです。特許を取って大儲けすることもできたのでしょうが、皆さんに喜んでもらえればと、無料で公開するなど太っ腹な企業です。

アイシン精機株式会社

ブレーキやドアなど、安全かつ快適に自動車に乗るためになくてはならない部品を製造しています。航空機を製造していた愛知工業と新川産業が合併してアイシン精機という企業名になりました。こちらも、トヨタが株式の24.81%を保有しています。逆に、同社はトヨタの株式は保有していませんが、デンソーや豊田自動織機の株式を保有しているので、実質的には持ち合いとなっているともいます。

子会社

トヨタ輸送株式会社

自動車を作ればお客さんのところまで運ぶ必要があります。このためにトヨタの子会社としてトヨタ輸送株式会社があります。この会社はトヨタが90.6%を保有しているので 残りのうち8.6%は株式会社ATグループが保有しています。ATとは愛知トヨタの略で、同社はトヨタが日の出モータースといわれていたころの1935年に設立されたトヨタ社の代理店の第1号でトヨタの第一号車G1型トラックを販売しました。その後愛知トヨタはトヨタ自動車とともに発展し、今はトヨタ系の販売会社12社の持ち株会社となっています。同社は名古屋証券取引所に上場していますが、このように、トヨタとともにありながら大株主にはトヨタ系の企業は含まれていません。

また、関東地方の自動車の輸送は同社の100%子会社のトヨタ輸送関東株式会社が担っています。つまり同社はトヨタ自動車の孫会社に当たります。

日野自動車株式会社

発足は1885年(明治18年)東京ガスの前身である東京瓦斯会社の機械部門が1910年(明治43年)に独立して砂型鋳物の技術から発展してエンジンなどの鋳鋼製品を製造しました。

同社は1982年7月1日トヨタと業務提携を始め2001年(平成13年)にトヨタ自動車株式会社に子会社となっています。2018現在、トヨタは同社の株式の50.3%を保有しており子会社の位置づけになっています。

完全子会社

ダイハツ工業株式会社

タントやトールなどの軽自動車を製造しているダイハツはトヨタの100%子会社です。起源は1907年(明治40年)と古く当初は発動機を作っていました。軽自動車を専門に製造していますが、1967年11月に両社は業務提携に至り、ダイハツ工業は1998年にトヨタ自動車子会社、2016年に完全子会社となっている。

米国トヨタ自動車販売Toyota Motor Sales, U.S.A. Inc

トヨタの自動車をアメリカで販売するのは、トヨタの支店ではなく現地の子会社を通してということになります。当初は日本から輸入して販売していますが、今は同社のグループがケンタッキーなどの工場で現地向けの自動車を製造しています。こちらもトヨタの100%子会社社長は日本人です。

トヨタループス

企業は、障がいのある人を従業員の2.2%以上雇用することが義務付けられていますが、これを特例子会社という別会社で雇用して達成することができます。障がいのある人の雇用においては、いろいろな職場に配属して、その中で配慮しながらやっていこうという考え方と、特例子会社でまとめて雇用し、そこで必要な障がいに配慮するための設備を集約したり、カウンセラーを配属しようとする考え方があり、いずれも一長一短あります。トヨタはもちろんいろいろな職場でも障がいのある方は活躍していますが、これとは別に100%子会社であるトヨタループスを設立しています。