証券取引所に上場している企業の数と取引所の区分
上場している株式会社の数
株式会社が日本に何社あるかは統計によっても異なりますが、国税庁の平成28年度法人企業の動向によると2,520,823社あるとのことです。
一方、上場している株式を扱う証券取引所は東京のほかに名古屋、福岡、札幌の計4か所あります。大阪にないのが不思議ですが、2013年に大阪証券取引所は東京証券取引所に統合されたためです。以前あった京都、神戸、広島、新潟の取引所は他の取引所に統合されてしまいました。証券取引の電子化が進んだので、各地方に取引所を作る意味が乏しくなってきたためだと思われます。
取引所ごとに上場している企業の数は次のとおりです。単純に合計すると4,067社ありますが、複数の取引所に重複して登録している企業もあるので、実際にはもっと少なくなります。例えば三井物産は全ての市場で登録しています。幸い、東京以外の取引所では、他と重複することなく単独で上場している企業数を公表しているので、これらを合計する大体の実質的な上場の企業の数を計算することができます。
証券取引所 | 上場企業数 | 東京以外の単独上場 |
---|---|---|
東京証券取引所 |
3,626 | 3,626 |
名古屋証券取引所 |
289 | 69 |
札幌証券取引所 |
56 | 15 |
福岡証券取引所 |
96 | 20 |
合 計 |
4,067 | 3,730 |
このように、わが国では上場している企業の数は約3730社、株式会社全体が250万社ですから上場している企業はごく一部といえます。
注:各取引所のホームページから独自に集計しました。
東京、名古屋は2018年9月末現在、札幌は6月、福岡は8月の数字です。
東京証券取引所
上場をしている企業の中でも、古くからある伝統的な企業から、創立してから日が浅く、これからどんどん成長することが期待される企業などまちまちです。また、投資家が安心して取引ができるよう、上場しようとする企業は一定の基準を満たし、企業の情報をしっかりと開示していくことが求められます。このときの基準や情報開示のレベルも、どこまで求めに応じることができるかは企業によってさまざまです。こうした観点から、同じ取引所の中でもさらにいくつかの市場に細分化されています。ここれは、次の表は東京証券取引所の市場の区分と2018年10月時点の上場企業数を示しています。
第一部 | 第二部 | マザーズ | JASDAQ スタンダード | JASDAQ グロース | Tokyo Pro Market | 合 計 |
---|---|---|---|---|---|---|
2,107 | 502 | 262 | 690 | 37 | 28 | 3,626 |
東京証券取引所ホームページより作成
第一部、第二部(本則市場)
第一部、第二部の市場は国内外を代表する大企業・中堅企業を対象としていて、本則市場といわれ上場するためには厳しい基準を満たす必要があります。例えば、過去2年間の利益の総額が5億以上で、有価証券報告書にうその記載がなく、株価を全て合計した時価総額が第二部で20憶円以上、第一部で250憶円以上となっています。また、特定の人が株式の多くを保有していると、その人に動向により株価が大きく変動するし、それ以外の株主が株主総会で影響力を行使することが難しくなります。そこで、株主数は第二部で800人以上、第一部で2,200人以上と、第一部ではより基準が厳しくなります。このため、第一部に上場している一部上場企業には、トヨタ、パナソニックなど日本を代表し、世界的にも有名な企業が名を連ねます。もっとも、第一部2,107社の中にも、日常の生活ではあまりなじみがなかったり、テレビでCMを打っていないような企業もたくさんあります。裏を返せば、我が国は隠れた有力企業がたくさんあることを示しています。
マザーズ
マザーズはMarket of the high-growth and emerging stocksの略で起業して間もないが成長が見込める企業が上場するための市場です。本則市場に上場するためには過去2年間の実績が問われます。ということはどんなに頑張っても上場するまでに、最低3年はかかってしまいます。これに対し、マザーズの上場基準には過去2年間の利益額などの基準はありません。また、時価総額も10億円以上と本則市場に比べて上場するための基準が緩やかになっています。
JASDAQ
JASDAQも同様に市場ですが、歴史的には証券取引場を通さず、証券会社の店頭で売り手と買い手が相対で(個別に)売買する「店頭取引」、「店頭公開」といわれる制度が起源です。2004年(平成16年)からは店頭売買から取引所を通しての売買になりました。JASDAQとはアメリカのNASDAQ(National Association of Securities Dealers Automated Quotations)の日本版ということで、Japan Securities Dealers Association Quotation Systemの略称です。JASDAQでは損益や規模など企業の実績を踏まえて上場する「スタンダード市場」と、企業が赤字でも将来性を見越せば上場できる「グロース市場」の2部構成となっています。
新規に起業して、まずマザーズやJASDAQに上場して、その後第二部、第一部に移行していった企業がたくさんあります。一方、秩父鉄道は当初から店頭公開企業として上場し、現在でも鉄道会社として唯一、JASDAQスタンダードの一員となっています。意外なところでは紙幣を発行している日本銀行は株式会社で、しかもJASDAQスタンダードに一銘柄となっています。第一部でないのは、株式の55%を財務省が保有していて(残り45%はだれが持っているのかは不明)、株主数などの基準を満たすことができないためであると思われます。
TOKYO PRO Market
このほかTOKYO PRO Marketは、プロ向け市場制度と呼ばれる制度に基づいて2012年、ロンドン証券取引所と共同で設立したものが起源で、プロを対象としているので、勧誘規制などの投資家保護が受けられず、提出する報告書も英語でよいなど要件も緩やかな市場です。