定額残業代の概要

2018年3月27日

定額残業代とは

労働契約には、賃金の中にあらかじめ残業代が含まれている、いわゆる定額残業代という形態があります。例えば求人票に、賃金25万円(基本給20万円、定額残業代5万円)というような表示がされています。また、営業手当5万円として、時間外当て支給しないというような規程をしている場合もあります。確かに、営業の仕事はお客さんとの夜のお付き合いやゴルフなどどこまでが仕事かわからない部分があります。そこで、これらについては決まった金額を残業代として支給するようにしてしまうのが固定残業代です。実際には営業以外の職種にも幅広く適用されていて、ともすれば固定残業代が何時間残業をしても残業代は固定ということで長時間労働や時間外手当の不支給の温床となっているとの指摘もあります。定額残業代では、次のような判例から、次のことが要件となっています。

  1. 定額残業代部分が、それ以外の賃金と、明確に区分されていること
  2. 定額残業代部分に何時間分の残業代が含まれているのかが、明確に定められていること
  3. 時間外労働(残業)時間が、上記2で定めた時間を超えた場合は、別途割増賃金の支払うこと
  4. 1~3の事柄が就業規則や契約書などに明記されていること

ここで、有名な判例としては次のものがあります。

定額残業代の判例

前のような要件は次の判例から導き出されています。

関西ソニー販売事件(大阪地判昭和63・10・26)

セールス業務に従事してた営業マンは基本給月額の17パーセントに当たるセールス手当が支払われていたが、時間外、休日、深夜労働の割増賃金が支払われていないとしてその支払いを請求しました。これに対し、割増賃金額がセールス手当の額を下回っている限りは有効であるとされました。裏を返せば、割増賃金額が上記一定額を上回る場合には、労働者はその差額の支払いを請求することができるということです。

創栄コンサルタント事件(東京地判平3・8・27)

測量士として、3か月の試用期間を経て正社員となり、賃金は年俸制として年額300万円(12等分して毎月25万円)、これには時間外労働手当のほか賞与等も含まれるとなっていた。これに対し、試用期間については時間外手当が支払われていたが、正社員になってからは時間外割増賃金が支払わず、またその後の業務担当の変更により時間外労働時間が増えたにもかかわらず相当の賃金が支払われなかったとして時間外手当や割増賃金を請求しました。判決では、年棒制であっても時間外手当の支給を支払うとの判決が出されました。

高知県観光事件(最二判平6・6・13)

同社でタクシー乗務員として勤務してきた4人は、隔日勤務で、勤務時間は午前8時から翌日午前2時(そのうち2時間は休憩時間)であり、賃金はタクシー料金の月間水揚高に一定の歩合を乗じた金額を支払うもの(完全歩合給)であった。そこで、午前2時以降の時間外労働および午後10時から翌朝午前5時までの深夜労働の割増賃金を支払うことを求めました。ここでは、完全歩合制であっても時間外労働や深夜労働については割増賃金を支払う必要があるとの判決がだされました。

テックジャパン事件(最一小判平6・6・13)
内容としては固定残業代の裁判ですが、最高裁での補足意見が重要な判決です。

Posted by ictsr4