授業をしたりテキストを作る時に困るのは、ある用語に対して色々な呼び名がある場合です。例えば統計学の回帰分析で、気温から売上を予測する場合、気温のように説明する方の量を「説明変数」、「独立変数」、「予測変数」と3つ呼び名があります。これに対して売上のように説明される方の量については、「応答変数」、「目的変数」、「従属変数」、「被説明変数」とたくさん意味があります。英語でも、A Dictionary of Statistics 3eによると、後者は”response variable”,”dependent variable”, or “outcome variable”3つでまだいいのですが、前者に至っては”antecedent variables”, “background variables”,”predictor variables”, “explanatory variables”, “controlled variables”, “independent variables”と恐ろしいことになっています。
なぜ困るかというと、説明する方の側はその時の状況によって同じ意味の言葉を無意識のうちに色々な表現をしてしまいがちです。ところが聞く方は初めて勉強するのですから、当然、混乱します。「説明変数と独立変数、同じ意味に決まってんじゃん、それくらい察してくれよ」と言いたくなってしまいますが、聞く方からすると、「そんなこと言われても分からないものは・・・」となります。
これとは反対に、似ているけど意味が違うものがあります。例えば回帰分析で「誤差」と「残差」というのは同じような意味に使われますが、正確には別物です。教える側がこのあたりの違いをしっかりと使い分けないと、当然、聞く方は混乱します。
では、どうすればいいでしょうか。まずやるべきことは、一つの用語については、表現を統一し、違うものはしっかりと言葉を使い分けることです。 ところがそうすると、その生徒の人が別のテキストを見て、テキストと異なる表現がされていると、また混乱します。ということは、テキストのわかるところに小さくでも、「別の言い方があります」「この用語とこの用語は似ているけどここが違います」ということを書いておくのが親切かと思います。
そもそも、教える立場はその分野について、まがりなりにもどっぷりと浸かっているわけですが、初めて勉強する人は異同がわかりません。この辺の情報格差を講師の方は常に意識している必要があるかと思います
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